
はじめに:別居と生活費。現実は甘くない
別居という選択は、夫婦にとって苦渋の決断です。そして別居後、最も多く寄せられる悩みの一つが「生活費」の問題。
「相手が生活費をくれない」「いくら払えばいいのか分からない」「子どもがいるけど生活が立ち行かない」
こうした悩みを抱えて、私たち離婚相談員の元へ多くの相談者が訪れます。
この記事では、別居中の生活費=婚姻費用の基本から、リアルなトラブル、支払いや請求の具体的手順、そして離婚相談員として関わった解決事例をもとに、わかりやすく解説していきます。
第1章:「別居生活費」ってなに? 離婚相談員が最初に伝えること

1-1. 別居中でも生活費を支払う義務はある
離婚相談に訪れる方の中には、「もう一緒に住んでいないから生活費は払わなくていい」と誤解している方が少なくありません。
しかし、民法760条では、夫婦は同居・協力・扶助の義務を負うとされており、婚姻関係が続いている間は生活費の負担義務が発生します。
🔍 離婚相談員のアドバイス
「別居していても、婚姻中は“お互いの生活を支える義務がある”と法律上定められています。相手に非があって別居した場合でも、基本的には生活費は支払うことになると考えてください。」
1-2. 対象となる費用の範囲
- 食費・日用品
- 住宅費・光熱費
- 子どもの教育費・医療費
- 携帯代や交通費も含まれるケースあり
第2章:支払えない・もらえない…典型的トラブルと相談員の現場対応

ケース1:支払えない夫、養育費も苦しい
40代男性からの相談:
「妻と2人の子どもが出ていきました。生活費を請求されてますが、ローンも残ってて払える余裕がないんです…」
このような相談には、収支状況を一緒に確認し、婚姻費用算定表を使って妥当な金額を算出します。
👩💼 相談員の対応
「まずはあなたの年収と支出を整理しましょう。そのうえで、家庭裁判所が公表している“婚姻費用算定表”を参考に、妥当な額を提案し、相手側と協議できるようアドバイスします。」
ケース2:生活費が1円ももらえず、実家にも頼れない妻
30代女性からの相談:
「子ども2人を連れて別居していますが、夫からは一銭ももらえず、通帳も止められました。生活が立ち行きません…」
このケースでは、弁護士との連携や法テラスの利用をすすめ、家庭裁判所への調停申立てをサポートします。
👩💼 相談員の対応
「今すぐ法テラスを通じて弁護士に相談しましょう。所得が一定以下であれば無料で対応できます。また、婚姻費用調停を申し立てれば、裁判所が支払い命令を出してくれる可能性があります。」
第3章:婚姻費用の金額相場と現実的な交渉法

3-1. 基本は「婚姻費用算定表」
たとえば以下のようなケース:
- 夫の年収:600万円(会社員)
- 妻の年収:0円(専業主婦)
- 子ども:2人(中学生・小学生)
⇒ 婚姻費用目安:月12万〜14万円
👩💼 相談員のポイント解説
「この算定表はあくまで“目安”ですが、裁判所での判断にも使われる資料なので、合意交渉のスタートラインになります。」
3-2. 話し合いでまとまらない場合は?
話し合いが難航する場合、以下のようなステップを提案します:
- 内容証明郵便で請求
- 家庭裁判所へ婚姻費用分担の調停申立て
- 調停不成立の場合は審判へ
🧑💼 相談員の助言
「調停は“争う場”ではなく、あくまで“冷静に話し合う場”です。不安であれば私たち相談員が手続きの流れや準備物のサポートもできます。」
第4章:婚姻費用でありがちな誤解とその解消
誤解 | 実際はこうです |
---|---|
別居したら生活費は不要? | → 法律上は支払う義務あり |
支払い拒否されたら終わり? | → 調停や審判で請求可能 |
相手が浪費してる気がする… | → 必要支出かどうか判断される |
自分から出ていったら請求できない? | → DVやモラハラがあれば請求できるケースも |
第5章:生活費問題をこじらせないための相談員的アドバイス
✔ 書面で取り決めを残す(メモでも可)
離婚相談員は、口約束が後にトラブルになるケースを数多く見てきました。
内容証明郵便や、調停記録、公正証書などの形で記録に残すことが重要です。
✔ 弁護士や支援機関に早めに相談する
- 法テラス:無料相談&弁護士費用の立替あり
- 各自治体の女性センターや子育て支援課でも生活費相談可
👩💼 相談員の実感
「“もっと早く来ていれば…”という方が本当に多いです。1人で悩まず、相談することで一歩が開けます。」
第6章:実際に解決した事例紹介
ケース:子育て中の妻が婚姻費用を取り戻した事例
「生活費をもらえず困っていた30代女性。離婚相談員と共に収入資料を整理し、調停申立書を作成。無事に月13万円の支払い命令が出され、生活が安定しました。」
ケース:収入が不安定な夫に代替提案を出して合意
「40代男性。正社員ではないため、算定表通りの金額は厳しいと相談に来られました。生活費8万円+子どもとの面会交流の合意書を作成し、円満に調停成立。」
まとめ:別居中の生活費は「知らなきゃ損」。相談は力になる
別居中でも、生活費を支払う義務があることは法律上明らかです。
しかし現実は、感情や経済事情が複雑に絡み、スムーズに進まないことが多々あります。
だからこそ、離婚相談員という“中立の立場”の存在が力を発揮します。
- 「相手に請求できるのかわからない」
- 「支払う義務があるのか不安」
- 「もう限界…」
そんな時は、一人で抱え込まず、行政・法テラス・弁護士、そして私たち離婚相談員にご相談ください。
あなたが“今後の生活を立て直す”ための一歩を、私たちが一緒に考えます。